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4.パタンの実例

Pattern Language in Urban Redevelpment Project 4

高円寺駅北地区まちづくり資料集VOL.3)
『魅力あるまちづくりをめざして――こうえんじオーガニックタウン』

1988年12月

東京都第一再開発事務所


C.アレグザンダー著 平田翰那訳『パタン・ランゲージ』(鹿島出版会)より

46 多店舗マーケット

MARKET OF MANY SHOPS

・・・商店網(19)で示したように、店を広く分散し、コミュニティの全員が最も利用しやすい配置にせねばならない。歩行者街路や買物街路(32)は、コミュニティ内の最大店舗集団によって形成されるが、その存続には市場が必要になるのが普通である。このパタンからは、市場の形状と経済的特性が得られる。

* * *

 あらゆる食品や家庭用品を、1つ屋根の下で買えるような市場が望まれるのは当然であり、また便利である。だが、スーパーマーケットのように単独経営だと、食品に個性がなくなり、そこに出かける楽しみが失われる。

 巨大スーパーの品揃えがバラエティに富むのは事実である。だがこの「バラエティ」は、大量仕入れや大量貯蔵によるものであり、量販の味気なさは否定できない。おまけに、延々と続く陳列棚のあとに、代金を徴収するせっかちなレジ係がいるだけで、人間的な触れ合いは皆無である。

 人間的な触れ合い、変化に富んだ食品、さらに扱い商品を熟知する店主のみがもつ個々の食品にたいする愛情、注意、知識などをとり戻す唯一の方法は、一つ屋根の下の小さな売り台で、商品ごとに別の店主が扱うような市場を再びつくり出すことである。

 現状のままでは、スーパーがますます巨大化し、他の産業まで併合し、マーケット広場の体験を非人間化の極にもっていきかねない。たとえば、ホーン&ハーダード社は次のような出店計画を目論んでいる。

 車や徒歩できた客は、動く斜路に乗せられ、店の中を整然と運ばれていく。明るい壁面パネルに展示される見本を見て(あるいは、特殊な鍵やクレジットカードで陳列ケースを開け)品選びをし、有線テレビで肉や野菜を注文する。それから倉庫のある別の場所に車を走らせ、注文した品を受け取り、万国共通のクレジットカードで支払いをし・・・ほとんど無人に近い・・・(*1)

 次に、これと対照的なサンフランシスコの旧式な市場についての記述を見てみよう。

 日をきめてマーケット広場に通ううちに、お気に入りの売り台ができる。たとえば、ウェスビル産のピピンリンゴやハウワーリンゴの並ぶ売り台がある。農夫が1つずつていにねいに選んで袋に入れ、歯ごたえと甘さを保つには冷所に保存したほうがよいと注意してくれる。ちょっと興味を示せば、自分の果樹園のことやリンゴの育て方について、青い目を輝かせて得々と説明してくれる。イタリア訛りの英語を話すくせに、なぜ澄んだ青い目と薄茶色の髪をもち長身なのかいぶかると、実はイタリア北部の生れだとうち明けてくれる。

端っこの売り台には、メロンの小山を前にしたハンサムな黒人がいる。あさって食べごろになるメロンがほしいが、選び方がよく分らないと彼に聞いてみるがよい。すぐにこれに間違いなしという1個(あとで、それが正しいを分かる)を選び出すばかりか、クランショーメロンであれ、西瓜であれ、次にメロンを買うときのために選び方の講義をしてくれる。客が常に良いメロンを入手し、賞味できるよう気遣ってくれるのである。(*2)

 スーパーのベルトコンベアより、このほうがはるかに人間的で生き生きとしているのは明白である。運営上の経済性については、重大な疑問が残されている。数多くの店を集めたマーケット広場に、果たして納得のゆく経済的基盤があるのだろうか。あるいは、スーパーの効率が至上を駆逐するのであろうか。

 どんな商売にも開業時の経済的障害が伴うが、それ以上の障害があるようには思えない。大きいのは店舗間の調整問題である−−つまり、まとまりのある市場を形成するよう分散する同業種店舗を調整して大量仕入れを可能にすることである。

 店舗を適正配置すれば、競合業種でも売り上げの5パーセントに達する収益をあげられる(*3)。NCR社の数字によれば、あらゆるコンビニエンス・ストアは、規模の大小にかかわらず同様の収益をあげられる。小型店がばらばらに位置していて、1か所でスーパーのようなバラエティを提供できず、スーパーから安値攻勢をかけられることが多い。しかし、中心地区に数多くの小型店が集まり、協力してスーパーに匹敵するバラエティを提供すれば、チェーンのスーパーに十分対抗できるのである。

 チェーン店の効率の1つは、大量仕入れによる効率である。だがこれでさえ、町中の同業店が集まり、需要調整と共同仕入れを行えば、十分に埋め合せがつく。たとえば、サンフランシスコ湾岸地域には、小さな手押し車で路上販売をする花売りが沢山いる。花売りたちは自分の問題は個別に処理しても、仕入れ時にはまとまって出かける。かれらは共同仕入れにより莫大な利益を上げ、しかも大手の花屋の3分の1の値段で販売できるのである

 もちろん、多くの店を集めて市場を開設することは生易しいことではない−−場所選定も資金調達も大変である。ここで提案するのは、初めは簡素で大まかだが、時とともに充実し改良されるような構造体である。写真に示すペルーのリマの市場は、当初は独立柱と通路が設けられたにすぎないが、やがて店−−大抵が6×9フィート(1.8×2.7m)以下−−が少しずつ建ち並んでいった。

 簡素な木造骨組を何年もかかって増改築してきた注目すべき例としては、ワシントン州シアトルのパイクプレース・マーケットがある。

したがって、

 現代的なスーパーマーケットの代りに、数多くの小型店で構成されるマーケット広場をいろいろな場所に設けること。個々の店は自律的な専門店(チーズ、肉、穀物、果物など)にすること。市場は最小限の骨組にし、せいぜい屋根、通路の輪郭を示す柱、基本的な設備などを用意するにとどめること、この骨組のなかで、個々の店が好みや必要に応じて、独自の環境をつくるのを認めること。

 通路の幅は、搬入用の小型カートや歩行者が通れる6から12フィート(1.8-3.6m)にすること−−通りぬけ通路(101)。賃貸料を低くおさえるために、売り台は小さく、ほぼ5×9フィート(1.5×2.7m)以下にすること。これより大きな売場を必要とする店は2区画を占有すればよい−−個人商店(87)。売り台の区画は隅柱で示すこと−−隅の柱(212)。場合によっては店主が自ら屋根を架けてもよい−−キャンパス屋根(244)。さらに市場内の通路と、周辺の町の歩行路を直接つなげること−−歩行者街路(100)・・・

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Last Updated : 2004/11/21